クロちゃんが心を開いたのは、本当にある日突然のことだった。
いつもは僕たちが離れない限りはご飯を食べに来ないのに、その日に限って目の前まで来てご飯を食べ始めた。
よっぽどお腹が空いていたのか、それとも僕たちを安心できる相手だと見なしたのか…
その真相は意外な人からもたらされることとなる。
目の前でご飯を食べているクロちゃんに手を伸ばしてみると、予想に反して頭や身体を撫でることができる。
僕「今日はクロちゃん触れるよ!ほら!」
妻「どれどれ…本当だ!うん?」
何か異変を感じた妻は、クロちゃんの身体を念入りに撫ではじめた。
妻「この子、血が出てる!ケガしてる!」
そう言われて妻の手を見ると、わずかに赤い血の跡が付いている。
猫が出血するほどのケガがどの程度のものなのか、僕には想像もつかなかった。
ただ、ご飯は普通に食べているし、来るときも足を引きずっているような素振りはなかったし、緊急を要するような重症ではなさそうだ。
とは言え、放っておいても大丈夫なものか、妻と二人で考えていると、近くにいた焼き鳥の屋台のオジさんが声を掛けてきた。
オジさん「そいつな、昨日チャトラの猫とケンカして、コテンパンにやられてたよ。」
どうやら、クロちゃんが出血した原因は、チャトラとの一戦によるものらしい。
そして、ケガをして弱っていたクロちゃんは、僕たちに助けを求め、これをキッカケに心を開くようになったのだった。
ただし、クロちゃんにとっては、チャトラとの因縁の関係の幕開けでもあった。
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