サバ美が4匹の子猫を連れてきたことで、僕たちの悩みの種がまたひとつ増えてしまった。
心配する僕たちに対して姉御は
「4ヵ月を過ぎた子猫なら健康状態も安定しているから、それほど病気の心配などもないよ。」
とアドバイスしてくれた。
しかし、客の出入りが多い駐車場なうえに、近くには交通量が多い道路もある。
果たして子猫たちが全員揃って成長できるかどうか、不安は尽きないのだった。
そして、ある日僕たちが恐れていたことが起きてしまう。
割といつも通りに駐車場で猫たちにご飯をあげていた僕たちのところに、表情を曇らせた姉御がやってきたのがはじまりだった。
姉御は喫煙所にいたオジさんから、倉庫の裏に猫の死体が落ちていたという話を聞いたらしい。
僕たちもそのオジさんと話したことはあるのだが、いつも酔っぱらっているような感じで話の信憑性はイマイチだと思っていた。
それに、いつも通りにトラちゃん、クロちゃん、チャトラにご飯をあげた後で、これといって欠けているメンバーがいる感じはしない。
あえて言えば、クロママやサバ美に会っていないことくらいだが、あの子たちはもう少し日が暮れないとご飯を食べにこないので、それほど心配はないだろう。
それでも姉御はオジさんの話が気になったらしく、倉庫の裏へとひとりで消えていった。
オジさんの話の信憑性はともかく、姉御ひとりで探させるわけにもいかないので、僕たちも恐る恐る倉庫の裏へと入ってみることに。
すると、そこにはしゃがみこみながら、何かを触っている姉御がいた。
僕たちが遠めから話しかけると、姉御は
「サビちゃんが死んでるの。少し虫がついてるから来なくていいよ。」
と答えたのだった。
あまりにも突然の展開だったが、僕はすぐにサバ美の子どもが死んだことを察した。
しばらくすると、毛並みを整えられた黒サビちゃんを手に乗せた姉御が帰ってきた。
まるで眠っているような黒サビちゃんに外傷はなく、姉御によれば病気が原因ではないかとのこと。
それにしても、サバ美一家が暮らす工場跡地と倉庫裏ではそれなりの距離があるのに、どうして黒サビちゃんが倉庫裏で死んでいたのか疑問が残る。
ひょっとしたらひとりではぐれてしまって、倉庫裏で息絶えてしまったのかもしれない。
いずれにしても黒サビちゃんを放ってはおけないので、駐車場の外れにある茂みの奥へと埋めてあげることにした。
めったに人が来ない茂みなので、黒サビちゃんのお墓としては悪い場所ではないだろう。
僕たちは黒サビちゃんをオヤツと一緒に埋めてあげて、天国へ行けるようじっくりと祈りを捧げた。
そして、それから1週間ほど経ったある日、もう1匹のサビちゃんが車に轢かれて無くなってしまった。
僕たちはもう1匹のサビちゃんの亡骸には立ち会えなかったのだが、姉御が黒サビちゃんの隣に埋めてくれたらしい。
やはり外の世界は子猫が生き抜くには厳しく、どうしても全ての子猫が成猫になるのは難しい。
サバ美の子どもは4匹のうち2匹だけになってしまったが、しばらくは注意して様子を見守ることにしたのだった。
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