駐車場の猫たちに本格的なご飯と水を置いていたのは、僕たちの予想の遥か上をいく小綺麗なお姉さん(通称「姉御」)だった。
トラちゃんはもちろんのこと、クロちゃんやチャトラも姉御に懐いており、ご飯や水を置いてもらえるのは僕たちにとっても嬉しいことだし助かることだ。
しばらくは姉御と顔を合わせても特に話をすることはなかったが、同じ猫たちを可愛がっている身としてはコミュニケーションをとってみたかったので、思い切って話しかけてみることにした。
いきなり話しかけられた姉御は少し驚いていたが、こちらが猫たちにご飯をあげていることを伝えると、すぐに笑顔で対応してくれた。
元来、人当たりの良い性格なのか気さくに受け答えしてくれて、僕たちは猫の世話についていろいろな話を聞くことができた。
話によると姉御は保護猫活動をしていて、自宅の近くでも猫にご飯をあげているそうだ。
そんな姉御がたまたまやってきたこの駐車場で猫の集団を見かけて、放っておけずに定期的に通うようになったとのこと。
今までにも自宅以外の場所で猫を保護することもあったそうで、駐車場も姉御のテリトリーとなったようだ。
僕はずっと気になっていた「野良猫にご飯をあげても良いのかどうか?」という問いを保護猫活動のプロである姉御にぶつけてみることにした。
そんな姉御の答えは「餌やりと手術はセットじゃないとダメ」だった。
猫は繁殖力が高く放っておけば、手遅れになるほど増えてしまい、余計に餌やりがトラブルの元になってしまうからだと言う。
さらに、産まれてくる子猫も人間中心の生活環境の中では野良猫として生き残れないことが多く、不幸な命を無くしたいという思いもあるそうだ。
今まで手術に対して目を背けていたのだが、姉御と話しているうちに猫に手術することの重要性が身に染みて感じられてきた。
こうして、姉御とコミュニケーションを深めていくうちに、僕たちは駐車場の猫たちを手術する決意を固めるのだった。
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