駐車場の近くにある工場跡地に住む痩せた黒猫を、僕たちはその見た目からリスザルと名付けた。
リスザルはクロママの娘でありクロちゃんの妹…となれば面倒をみないわけにはいかない。
しかしリスザルは警戒心が強く、なかなか近づくことはできなかった。
そんなある日、リスザルにご飯をあげていると、近くで何やら小さな物音がした。
その正体は予想するまでもなく子猫だった。
リスザルは不妊手術をしていないメス猫だったので、どうやら子猫を産んでしまったようだ。
一緒にいた姉御によると餌場に子猫を連れてくるのは、子猫が4ヵ月を過ぎてかららしい。
ということは、リスザルはひっそりと子猫を4ヵ月も育てていたことになる。
今までリスザルはもちろん、子猫も見かけたことが無かったので、少し面食らってしまった。
しかし、子猫にとって野良の世界は過酷で、生き残れる確率は相当に低い。
実際にトラちゃんの子どものコトラちゃんは、いつの間にか消えてしまった。
同じようにリスザルの連れてきた子猫も、どこかに消えてしまうかもしれない。
そんなことを考えると、子猫のあどけない可愛さも心が重くなる要因になってしまう。
コトラちゃんを助けられなかった僕たちにとって、リスザルが連れてきた子猫は色々な意味で悩みの種になるのだった。
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