若干の後ろめたさを感じながらも、駐車場に住むキジトラに餌をあげて数日。
駐輪場の付近でキジトラを探してみると、離れたところから嬉しそうに駆け寄ってきた。
たった一度、ほんの少しのおやつ用カリカリをあげただけなのに、キジトラの中では餌をくれる人としてインプットされたようだ。
しかも、こちらを見つけて「ニャニャニャッ!」と鳴きながら駆け寄ってくるのが、たまらなく可愛らしい。
こんな人懐こい性格だからこそ、色んな人に可愛がられているのだろう。
僕と妻はこのキジトラに「トラちゃん」という名前を勝手につけて、毎日のようにおやつ用カリカリをあげるようになった。
さて、トラちゃんは野良猫らしからぬ性格で、人に対する警戒心などはほとんど持ち合わせていなかった。
特に餌をくれる人には歓迎の挨拶とスリスリを欠かさない人懐こさで、自分たち以外にも多くのファンを獲得していた。
そんな性格のせいなのか、多くの人が行きかうお店の入口近くで平然と寝ていたり、駐輪場の真ん中で毛づくろいをしていたり、と自由な暮らしを堪能しているようだ。
そしてトラちゃんを可愛がっている人からは、おやつやご飯の差し入れがあり、基本的には食べることにも不自由していないように見える。
しかし、タイミング悪く餌をくれるお客さんに恵まれないと、この間のように空腹状態に陥ってしまうのだろう。
こうしてトラちゃんと仲良くなった僕と妻は近所ということもあり、毎日のようにお店へ通うようになる。
これが2017年の初頭のことで、この後はトラちゃんを中心に僕たちの保護活動が始まることになったのだった。
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