コトラちゃんを失った悲しみはあったものの、いつまでも悔やんでばかりはいられない。
秋の発情期を迎える前に、トラちゃんとクロちゃんの不妊手術を済ませておく必要があるからだ。
しかし、僕たちにはトラちゃんやクロちゃんを手術する術が無かった。
そこで、猫のプロである姉御に相談してみたところ、2匹の手術を快諾してくれた。
姉御の話では、トラちゃんやクロちゃんのように人懐こい子なら、手も掛からないし手術は簡単とのことだった。
そして手術を前日に控えたある日、姉御はステンレス製の捕獲機を持ってやってきた。
細長い檻のような形をしていて、猫が中に入って餌を食べると、入口が閉まる仕掛けになっている。
トラちゃんやクロちゃんは僕たちの目の前でご飯を食べてくれるので、割とスムーズに捕獲機に入るだろう。
そして捕獲機の準備をしていたのだが、トラちゃんは予備で用意していたキャリーケースの方に興味を示していた。
そこで、トラちゃんは捕獲機を使うことなく、そのまま手づかみでキャリーケースへと入れることができた。
残るクロちゃんだが、どうやら見慣れない捕獲機を警戒している様子。
捕獲機に入っているオヤツは気になるものの、なかなか奥まで入ることは無かった。
そこで、姉御がクロちゃんのお尻を押し込んで、無理やり捕獲機の中へ入れてしまった。
急に入口が閉まって驚いたクロちゃんは、捕獲機の中で小さくなりながらか細く鳴いていた。
しかも、あまりに怖かったのか、捕獲機の中でオシッコを漏らしてしまった。
身体が大きく自称ボスのクロちゃんだが、初めて経験する捕獲機がよほど怖かったらしい。
こうしてトラちゃんとクロちゃんは、2匹揃って姉御の家へと連れていかれたのだった。
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