経済的に厳しい私が保護猫シェルターを作るために選んだのは、訳アリ物件というよりもゴミ屋敷という表現の方が相応しい一戸建てでした。
その室内には家財道具は言うに及ばず、個人情報が記載された書類なども全て放置されていたのです。
さらには元の家主さんであるおばあさんの私物が、そこら中に散乱している状態でした。
おそらく多くの人が一生のうちで経験しないだろうゴミ屋敷の掃除というものを、私は保護猫シェルター作りを通じて思いがけず体験することとなったのです。
私は保護猫活動で様々な現場に足を運んでいますので、汚かったり臭ったりということにある程度は耐性があるつもりです。
そんな私でもこの家のどこか饐えたようなカビ臭さは、どうにも抵抗がありました。
特に困ったのが、リビングの窓が劣化していてほとんど開かない状態になっていたことです。
窓が開かないと、室内の空気を入れ替えて辺りに漂う臭いを取り去りたくても、なかなか思うようにはなりません。
そのせいなのか、リビングの至る所に使いかけのリセッシュが置いてありました。
おばあさんが習慣にしていただろうリセッシュの散布を私も試してみましたが、室内に根付いているカビの臭いを取り去ることはできませんでした。
とりあえずカビの臭いについては、室内の片づけが済んでからゆっくり対策を考えるしかありません。
喫緊の課題となるのは、室内を覆うように散乱している不用品を処分することです。
最初のうちは何か使える物があれば再利用しようと考えていたのですが、どれも埃っぽく汚れているので大半は捨ててしまうことになりました。
こうして物を捨てることを続けていると、本当に流れ作業のようになってきます。
私はただ無心でゴミを分別し、燃えるゴミはゴミ袋へどんどんと詰めていきました。
唯一、助かったことがあるとすれば、おばあさんが大量のゴミ袋を残してくれていたことです。
私が住む自治体は指定のゴミ袋が必要なので、大量のゴミを捨てる際にはゴミ袋を買う費用が掛かってしまいます。
この家の可燃ゴミを全て捨てるとなると、相当な指定ゴミ袋が必要になってきますから、その分の出費が抑えられたのはとてもありがたいことでした。
ゴミ袋の心配なくゴミ捨てを進められるのは良いことでしたが、本当に相当な量の物が放置されていました。
入院したおばあさんは身の回りに必要な物を持っていったのか、と心配になるほどの量が残されていたのです。
しかし、仮におばあさんが必要な物だったとしても、私が保管しておくわけにはいきません。
私は少し心を鬼にしながら、ひたすらにゴミ袋の山を築いていくのでした。
(続く)
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